SP盤的文献紹介
音溝の修復


音溝がつぶれてしまったり欠けてしまい、まともに再生できないレコードほど残
念なものはありません。特に稀覯盤や高額盤、愛聴盤であったりするとなおさら
です。何とか修復したいものです。

今回、欠損してしまった音溝を比較的簡易に修復することに成功しましたので御
紹介します。

従来極めて困難であった音溝長手方向の欠損修復も可能となりましたので、是非
お試しください。


■修復の様子

次の写真は修復前の状態です。



欠損部があり、再生時に隣接溝にジャンプしてしまいます。
この欠損部は音溝長手方向なので修復は非常に困難ですが、ここで御紹介する方
法で比較的容易に修復が出来ます。

次の写真は修復後の状態です。黄色丸が同一箇所です。



ほぼ完璧な修復が成功しました。肉眼では周囲との艶の様子は異なりますが、余
程拡大して観察しない限り、どの部分を修復したのかわかりません。
電気再生の軽針圧でもまったく問題なくトレースできます。

これで、ニコライ・フィグネル(T)ウィリー・ブルメスター(Vn)の稀覯盤が復活し
ました。


■用意するもの

・ 欠損した盤
・ 蓄音機
・ 竹ヒゴ
・ フローリング床補修材「かくれん棒」

  ホームセンターやDIYショップで売っています。
  クレヨン状のパラフィンワックスで、硬さもクレヨン程度です。
  色は黒です。


■注意事項

この方法の最大のメリットは、クレヨンなので失敗しても取り除くことが容易な
ことです。

デメリットはクレヨンでの修復ですから、強度が期待できないことです。
したがって、蓄音機での再生は不可能です。電気再生のみ可能となります。
また、シェラック盤でのみ実践した方法で、ビニール盤では検証していません。

いずれにせよ、自己責任で実行してください。
失敗しても私は責任を負えません。
これがお約束です。


■作業の手順

かくれんぼうの先端を音溝と垂直方向にこすり付けます。
次の写真であれば、上下方向にこすり付けます。



簡単に言えば音溝でクレヨンをすり下ろすイメージです。

適度に音溝の欠損部が埋まったところで、ルーペで観察しながら爪の背で盛り上
がったクレヨンを、溝を傷めない程度で強めに押し付けます。



欠損部が凹んでいるのであればさらにクレヨンを盛り上げます。
欠損部周辺が一様にフラットになるまで押し付けます。
この時点で欠損部周辺は音溝が埋まってしまった状態で平坦になっているはずで
す。



溝を切り直す原理は簡単です。次の断面図を御覧ください。
先端がクシ状になった特殊針で、埋め戻した部分に溝を切り直すのです。

従来行ってきた鉄針を使って溝を切り直す方法と比較すると、隣接する溝とのピ
ッチや掘る深さも正確で、大変巧妙な方法です。

具体的には次のように行います。
蓄音機を使い、特殊針でレコードの正常な部分をトレースして針の先端を図の様
に整形してしまいます。音溝の形を写し取る工程ですから、修復する盤そのもの
で行う必要があります。


さて、針先の整形が出来たところで、クレヨンで埋め戻した部分を強引にトレー
スすると、埋められた音溝が強大な針圧で掘り返されます。欠損部にも適度な溝
が切られているはずです。


ここで、詳細を解説します。
先程整形した特殊針の先端は上図の様になっています。
埋め戻した欠損部は先端Aが溝を切り直して行きます。その時、BとCはガイド
の役割を果たし、Aが正確なピッチで左に移動することを助けます。


では、溝を切り直すために特殊針を作ります。
蓄音機のサウンドボックスに挿入できる太さの竹ヒゴを用意し、ヤスリを使い写
真のように裏表均等に削って針先を作ります。竹串では太過ぎます。



必要なものは目の細かいヤスリです。私は爪切りのヤスリを利用しています。



出来上がった針を、次の図の方向にサウンドボックスにセットします。
黄色の円が特殊針の太さのイメージです。


この時、針先がかなり立った角度になるようにサウンドボックスを調整すると針
先整形/溝切時に具合が良いようです。


以上の準備が整ったところで、ターンテーブルを回転させ、意を決して特殊針を
盤面に降ろします。最初は欠損のない部分をトレースさせ、特殊針先端を整形し
ます。1分もトレースすれば十分でしょう。

ここで一度針を上げます。
今度は欠損部直前の箇所を狙って特殊針を盤面に降ろします。すると、切り屑を
出しながら音溝を切り直して行きます。欠損部を通り過ぎたら針を上げます。
エアー・ブロアーで切り屑を吹き飛ばし完了です。

ルーペで修復状況を観察します。切り直した溝が浅いようでしたら再度繰り返し
ます。


盤面に切り屑が残ってしまったら、歯ブラシでこすって取り除きます。歯ブラシ
「デンター・システマ」のように毛先が鋭いものを使います。余り強くこすら
ないように注意します。


いかがでしょう? 上手く出来ましたか?

スキップやリピート無しに通して聴くことが第一の目標なので、とにかくトレー
スできれば良しとします。

「ノイズレスのトレース」といった、これ以上のクオリティーをお求めの方は、
更なる検討と実践をしていただき、是非ともその手法を公開してください。

批評ではなく、実践こそが第一歩です。

挑戦者の御健闘を祈念致します。

体験談、ご相談は「SP盤的掲示板」へどうぞ。


2006年01月11日
新規アップ
2006年10月05日
修復方法を刷新

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