SP盤的文献紹介
ヴァレロ(T)


フェルナンド・ヴァレロ Fernando Valero (T):1854.12.6〜1914.2 

スペイン生まれのこのテノールに関してはいぼたろうさんのブログをご参照くださ
い。 本邦初のレコード紹介文だと思います。
他にはルドルフォ・チェレッティの「テノールの声」にその歌唱が紹介されています。
興味のある方は是非ご一読ください。

ヴァレロのレコードは、録音を残すことなくこの世を去った19世紀末の大テノール「ガ
ヤレ」の後継者と目され、完全に絶滅してしまった歌唱法の持ち主の声を聴くことがで
きる極めて貴重なものです。今回その現物を手にしましたので、ここではディスコグラ
フィカルな話題をアップします。


■ディスコグラフィカルな分析



Fernando Valero
Red G&T G.C.-52718、Stamper-1
Mat:3925R
Rec:1903.6.16, London
Brindisi "Cavalleria Rusticana" (Mascagni)
78.0rpm @ A=440Hz


まずは、さすがに珍品であることが推測できるように、スタンパーはT(初版)で
す。 



写真にあるカタログ番号「52718」の陽刻にサフィックスがありません。スタンパ
ーTの証です。 もしスタンパーT以外が発見されたら販売枚数が多いことになり
ます。 参考までに1枚のスタンパーからは500〜2000枚がプレスされたそうで
す。 

カタログ番号に関し気付いた点があります。 
この盤のカタログ番号「52718」はイタリア版カタログに振り出された番号で
す。 いぼたろうさんのブログにあるようにLondon吹込英国販売ならばカタログ番
号は1〜9999のはずです。 London吹込イタリア販売ということなのでしょう。 

次に、マトリクス番号です。 



写真からは「3925R」が読み取れます。 
一方、ケリーのディスコグラフィー書籍版では「3925b」とあります。 
CD-ROM版では以下のとおり「3925G」とあります。 
FERNANDO VALERO (p) (London) 
52716 3922G 16-6-03 Dormi pure (Scuderi) 
52717 3924G 16-6-03 Cavalleria Rusticana: Siciliana (Mascagni) 
52718 3925G 16-6-03 do: Viva il vino (Brindisi) 
52719 3926G 16-6-03 El amor es la vida (de los Moteros), in Spanish 
どちらもケリーのタイプミスだと思います。R・G・bはキーボード上で近い位置にあ
ります。 

なお、サフィックス「R」は、B G Royal が吹込担当エキスパートであることを示
します。


■声を聴いての率直な感想

針を降ろすと、ピアノ伴奏が入る直前に演奏者のおしゃべり声が入っています。 
「よし、いくぞ!」とかなんとか言ってるのでしょう。 
ピアノの音からワウフラッターはほとんど感じません。優秀な吹込です。音程も
しっかりしています。ロシアのニコライ・フィグネルと比べたらかなり近代的で
す。とはいえ、今では完全に絶滅してしまった歌声で、現代の歌手のような厚み
のある声ではありません。これは録音周波数特性によるものではないでしょう。
口を大きくあけると途端に厚みのない声になるように感じます。 

比較のためにフェルナンド・デ・ルチアの声を聴きました。 
今まで古臭い声だと思っていたデ・ルチアが今流に聴こえました。 
声に厚みがあります。 

未熟な録音技術のせいかもしれませんが、ヴァレロの声にはビブラートがほとん
ど無い様に聴こえます。 それゆえ単調な声に聴こえるのかもしれません。 

比べながらの聴き方は邪道なのでしょうが、時代と共に変遷する歌唱法の推移を
追体験できるのは、この道楽の素晴らしいところです。



滅多なことでは入手できる盤ではないので、今後さらなる入手は望みが薄いとは思いま
すが、取り逃がさないようサーチを続けます。


2008年05月13日
新規アップ


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